12月の法話集 ~八方ふさがりの中で~


星野富弘さんは、体育教師でしたが、二十二歳のとき不慮の事故で手足の自由をまったく奪われてしまいました。それからの九年間病院でのむなしい日々を、どれほど苦しみ抜いたか。正に八方ふさがりの九年間でした。
やがて、口に絵筆をくわえて絵を描く事を始めます。「美しさに感動できる心さえあれば、私にも絵が描けるのではないかと思った」と星野さんは言っています。
星野さんが、詩と絵をあわせた『風の旅』という美しい本を出版しました。その本の中にこんな詩があります。

「折れた菜の花」
私の首のように
茎が簡単に折れてしまった
しかし 菜の花はそこから芽を出し
花を咲かせた
私もこの花と同じ水を飲んでいる
同じ光を受けている
強い茎になろう

強い茎になろうという星野さんの言葉は、八方ふさがりの苦難の中で希望を持ち、願いを持ち、目標を持つことが、そこからぬけ出す唯一の道だと教えているようです。

わたしは傷を持っている
でも その傷のところから
あなたの やさしさが しみてくる

これも星野さんの詩です。なんと暖みのある詩でしょう。八方ふさがりの自分をじっくりと受けとめて、むしろ他の人の愛を、やさしさを、心から喜んでいます。
星野さんの本は、今、全国の人々の間で、宝物のように大切にされています。



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