12月の法話集 ~ミシンを踏んだ少年の夢~


インドの貧しい村で出会った少年のことが忘れられません。
少年は十三歳。小さな洋裁店で見習いとして働いていました。十三歳といえば、日本なら中学生として学校に通っています。けれど彼はまるで売られるようにして洋裁店の見習いに出されました。貧しい家計を助けるというより"口べらし"といった方が当たっています。
彼は店の主人の期待以上に洋裁の技術を自分のものにして、ときどきびっくりするような働きをしました。子どもながらにミシンを踏ませてもらえるのもそのためです。
少年に、
「立派な職人になって、そうだ大きな町に店を出したらいいねえ。大きな夢を待って頑張るんだ。」
と励ましたつもりだったのですが、少年はムッとした顔でいいました。
「ボクはそんな夢なんか持たない!」
「じゃあ、どんな夢?」
と問いかけますと、ミシンをとめて彼は語りました。
「たった一台でいいから、ミシンがほしいんだ。ご主人に教わった方法で、ボクは子どもの服をつくるよ。この村の子どもたちは貧乏で、みんな裸さ。ごらん よ、あの男の子はボクの友だちだけれど、ズボンに大きな穴が開いているよ。あいつのためにズボンをつくってやりたいんだ。だれでもが買える安い子ども服を ボクはつくるんだ。町になんか出ないよ。大きな店もいらないよ。ボクを育ててくれたこの村で子どもの服をつくって村への恩返しだ。でも、一台でいいからミ シンがほしいなあ・・・・・・、これがぼくの夢さ。」
何とつつましやかで、けなげで、清らかな夢でしょう。少年の声がいまもときおり聞こえてきて心打たれます。



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