12月の法話集 ~仏さまありがとう~


 大晦日。近ごろは除夜の鐘をつきにお寺を訪れる方が多くなりました。  除夜の鐘は百八つまでと決められているけれど、あるお寺では希望者があまり多いので、百八つどころか三百回近くにもなってしまうということ。ご住職が申されるには「除夜の鐘をついて、過ぎ去った一年を反省し、来るべき年の幸福を願ってくださるのなら、いくら多くの方が鐘をついてくださってもけっこうですよ」とのこと。

 除夜というのは、"一年を取り除く夜"という意味で、文字通り十二月三十一日の夜のことをいい、「昔はご先祖様をおまつりし、家族が一年間無事に過ごせたことを感謝して、宴を開いた」と『日本歳時記』にもあります。 まさに家族そろって「仏さま、ありがとうございました」とお礼を申し上げたいのですね。

 家族そろえば"年越しそば"になりましょう。この年越しそば7は、そばのように細く長く生きることを願って大晦日に食べる習慣になったといわれます。 年越しそばをいただきながら、近くで、遠くから聞こえてくる除夜の鐘に耳傾けてください。除夜の鐘は百八つ。百八つの煩悩を取り除くという鐘の音。一つ、二つ、三つと聞くうちに心も澄んでまいります。 煩悩とはわかりやすくいえば、自分にとって離し難い、捨て難い "こだわり" "欲望" "愛着・執着(しゅうじゃく)"のことですね。この煩悩に端を発して起こるさまざまな感情が、人生に災いをもたらすことがあります。

 人生がより平穏であることを願うとき、煩悩消滅を祈り、素直に仏さまに身も心もおあずけして、いま生かされている喜びを「仏さまありがとうございます」の言葉に乗せてお礼申し上げたいものです。

それでは、よい新年をお迎えください。



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