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其の二十六


おまじないの効用
 
なんでもコンピュータまかせの現代でも、昔ながらのおまじないがいろいろとおこなわれています。 
イボを取り除くおまじない、しびれを治すおまじない・・・まだまだいっぱいあるでしょう。おまじなないとは何でしょうか。
まじないとは、すなわち、「魔事無い」で、魔事をなくすという意味です。魔事とは、人間を迷わせたり、苦しめたり、病気にしたりする魔の力をいいます。正しいことを実行する意志を妨げるのも、魔のしわざなのです。魔を封じ込める方法のひとつがおまじないであり、魔がやってくることを未然に防ぐのが魔除(よ)けのお札やお守りであります。
実際におまじないの効きめがあるだろうか、もともとおまじないなどはインチキなのではあるまいか、という疑問を抱いている方は少なくないでしょう。
どんなおまじないが効力満点で、どんなのが無力で役立たずなのか、その辺をだれもが知りたがっているようです。
魔とか、魔事とかいうものは、本来、外から取りつくのではなく、人の心の内側に発生する有毒物質、と考えるべきでしょう。お経本を読んでみますと、さまざまな種類の魔があることが分かります。
一心に修業しているお坊さんの精神を乱す魔があるかと思えば、必死で病気と戦っている人を弱気にさせ、生きる勇気を奪おうとする魔もあります。
おまじないの言葉はいろいろあっても、それがいかさまでない本当のおまじないなら、おまじないを唱えることは、仏さまの教えを自分に言い聞かせるようなものなのだ、とお考えください。
仏さまの教えをひたすら信じ、その日その日の暮らしのなかで、くり返しおまじないを唱えることによって、「魔事」の「無」い、幸せな人生を送ることができるのです。
例えば、交通安全のお札を車に張りつけていれば事故に遭うことはない、と思い込むのは誤りです。
お札があることによって、自分の運転をいつも仏さまが見守ってくださるのだ、と自覚して無謀運転を慎むのなら、あなたの心に魔がさして猛スピードで突っ走るようなことはありません。
いかがわしいおまじないの特徴は、まじない師と自称する人が、悩んでいる人に対して、常識はずれの高額のお礼を要求したり、食品とも薬ともつかない品を売りつけようとすることです。
普通のお寺のお守り札は、だれでもいただけるように、少額のお布施をお願いするだけでお分けしているはずです。
仏さまの教えをよく知り、よく守って「魔事無い」家庭を築いていきたいものです。

【龍昌 平成4年 春のお彼岸号】より抜粋

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