はじめに
本報告書は「地域における青少年の指導者養成」という主題のもとに、ユースワーカーの活動とその養成に関する国際比較の研修を目的として、アメリカ合衆国のボストン大学ソーシャルワーク校を中心に視察研修をした。
わが国では出生数及び合計特殊出生率の低下による少子化が問題視され子育てに関する社会的支援の必要性が指摘され、各種の子育て支援策が実施されてきている。しかし、子育て支援策では、主として乳幼児期や年少児童とその保護者が対象とされ、ミドルティーンからハイティーンへ対応する施策には関心が及んでいないのが現状である。
思春期における親子の葛藤、社会的無関心、情緒的問題、反社会的行動、非社会的行動などにも、子育て支援の枠組みをより広げ対応していく必要がある。
青年期の問題としては、常に非行問題が社会的関心を集めてきている。その内容についても大きく質的変化が生じてきている。
国は、青少年対策を広く「青少年の健全育成」として整理し、関係諸官庁の参加のもとに、経理府をコーディネーター役として幅広い施策を展開してきている。この施策のなかでも、非行問題への偏重が近年改められてきた。しかし、こうした動きのなかで逆に青少年にかかわる施策全てが健全育成として含み込まれてしまい焦点化がなされにくい面もでてきている。
現代社会では、児童それぞれが競争相手として同世代をとらえるような教育が「受験戦争」という名のもとに行われ、同年齢あるいは異年齢集団による活動がもたらす達成感や、協力による満足感を得にくい状況が生じている。
青少年がスポーツや野外活動に限らず幅広い分野で主体的に集団活動に参加し、そこで一定の経験を積むことは青年期の一過程として促進されるべきことであろう。活動の経験は心身の発達を促し、社会性も身につけられていくことになる。そのためには、青少年のグループを組織し、活動を側面から援助していく者(指導者)が必要である。
本報告書は、以上のような認識のもとに先進国の青少年指導者の活動とその養成内容について研修したものである。
最後に、こうした問題意識に理解を示し、研修の機会を与えてくださいました山田町当局に心より深々なる感謝の意を表する。また、研修滞在中多くの便宜と多大なご指導、ご協力を賜りましたボストン大学ソーシャルワーク校関係者各位並びにボランティア通訳をお引き受け下さいました、ボストン日本協会、ニューヨーク日本協会の方々に心より深く感謝の意を捧げる次第である。
平成10年9月21日
清 水 誠 勝