坐禅入門(2)

場 所  
 坐禅をするための部屋はなるべく静かで清潔であること。照明は明るすぎも、暗すぎもしない程度に。絵や写真など心を散らすもののない落ちついた色の壁のあるへやがよい。
 
服 装  
 服装は十分ゆとりのある太めの布地のものが望ましい。女性の場合は太めのスラックスか、裾が十分に開く長めのスカート。いずれもまず簡素で清潔であること。坐禅の時は必ず素足で、ソックスや足袋は脱ぐ。原則として装身具や時計はつけない方がよい。
 
問 訊  
  自分の坐る場所に向かって合掌低頭(がっしょうていず)する。これを隣位問訊(りんいもんじん)という。自分の両隣に坐る人たちに対する無言の挨拶である。隣位問訊を終わったら右回りをして後ろ向きになり、再び合掌低頭する。これを対座問訊(たいざもんじん)という。反対側に坐る人たちへの無言の挨拶である。隣位問訊・対座問訊は自分の両側や対位に人がいない場合にも必ず行うのが作法である。
 






坐 蒲  
 坐禅の時、姿勢を正し、高さを固定するため、尻の下にパンヤをつめた円形の厚い敷物をしく。これを坐蒲(ざふ)という。坐る時は背骨の末端が坐蒲の中心に来るように腰をおろす。あまり深くかけ過ぎない方がよい。坐蒲がない場合には座蒲団を二つ折りにして代用する。背筋が自然に伸びるような高さが望ましい。座蒲団の薄い場合四つ折りにすることもあるが、上体の安定が保ちにくいので二つ折りにした座蒲団を二つ、かみ合わせるようにした方がよい。坐る位置と壁との間は約一メートルくらい離れるようにする。
  
足の組み方

足の組み方には
二種類ある
 
半跏跌坐(はんかふざ)
 
 左足を右足の股(もも)の上にもっていく。下にしいている右足をグッと深く奥に引き込み、両膝を水平に下につける。上げた方の足の膝が浮きがちになるので注意する。
 
 
結跏跌坐(けっかふざ)
 
 まず右足を左足の股のうえにもっていく。次に左足を右足の股の上におく。双脚の状態は均等になること。あまり深く組みあわせすぎない方がよい。最初からこの組み方をするのが困難に場合は、半跏跌坐から徐々に足を慣らしていくようにするとよい。
 
手の形  
 右手の掌を上に向けて、自然に下腹部あたりにおき、同様に上に向けた左手をこれに重ねて、両手の親指を水平に軽く接する。肩の力は抜いて、両肘をやや外側に張るようにする。両親指の接点を上にとがらせたり、下にくぼませたりしないこと。また両親指は離れてもいけないし、力を入れてもいけない。この形を法界定印(ほっかいじょういん)という。
 
左右揺振  
 掌(たなごころ)を上に向けた両手を両膝小僧の辺に自然に伸ばし、上体を左右に七,八回揺り動かす。最初は大きく次第に小さく、時計の振り子が次第に止まるように身体を調えてゆき、上体を中心にピタリと静止させる。坐禅から立つ時も左右揺振をするが、この時は小から大へ揺振する。
 






調 身  
 坐禅は姿勢が正しくならなければならない。腰にきまりををつけることが大切。尻を後ろにつき出すようにし、背骨をぐんと伸ばし、頭の先で天をつき上げるようにする。肩や胸や腹に力が入らないように全身の力を抜き、頭を引き起こす。口は閉じ、口の中に空間をつくらない。
 



調 息  
 次に深く息を吸い込み、徐々にはき出す。これを欠気一息(かんきいっそく)という。はき出すのは吸い込んだ息の八〇パーセントくらいにとどめる。これを二,三回くり返し、次第に自然な自分の呼吸のペースに調えていく。最も自然な呼吸をすればよい。
 
調 心  
 壁に向かい法界定印(ほっかいじょういん)を組み坐禅に入る。目はとくに半眼にするのではなくふつうに目を開けた状態で視線を四十五度の角度におとす。坐禅は精神統一の方法ではない。また無念無想になることでもない。雑念や妄想がいくらわていきても一切とりあわないこと。生ずるにまかせ、滅するにまかせることである。
 
終わり方  
 坐蒲のひとくぎりを一ちゅう【火へんに主】(いっちゅう)という。古くは線香一本が燃えつきる時間の長さを一単位としたことによる。約四十分~四十五分くらいに相当する。ひとくぎり坐ったら、今度は小さくより大きく左右揺振したのち、坐を立ち、正面を向いたまま右回りにあとずさりして坐蒲または座蒲団の後ろにいたる。最後に再び隣位問訊、対座問訊をして終わる。
 
 

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