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子育ての過程と非行


 犯罪学において、非行の助長における家庭の役割に関する研究には長い伝統がある[7]。家庭には温かさや支援が欠如し、その両親には子どもの行動を管理(マネジメント)するスキルがないような特徴を持つとともに、その生活が衝突や虐待に特徴づけられるような家庭に育った子どもが非行に走る傾向がある一方で、子どもの支えとなってくれる家庭は、非常に好ましくない、有害な外部環境においても子どもを守ることができることを、われわれは知っている。
 親の愛情や親子のかかわり合いの有限の効果を強調している社会統制理論や、高圧的な家族のふれあい(相互作用)のパターンがいかに学習され、維持されるかを重視する社会学習理論は、非行における家庭の役割を説明するものとして発展した[8]。経験的に言って、非行に対する家庭の社会的な順応の感情的な側面と管理的な側面との関連づけには圧倒的な一貫性が見られる[9]。

 家族マネジメント
親による家族のマネジメント(管理)の方策は、ルールの設定や、その遵守の監視、子どもの攻撃(暴力)や反社会的行為に対する信念ある躾などをはじめ、子どもたちの行動に注意を払い、これを正すために用いる範囲の方策に及ぶ[10]。親の監視や監督は、非行に関連する最も不変的に重要な家族マネジメントの側面である。これは通常、子どもが親の目の届かないところにいる際に、彼らがどこにいるか、誰といるか、何をしているかを親がどの程度知っているかという、その程度を評価する諸設問によって測定できる。オレゴン社会学習センター(Oregon Social Learning Center)の調査研究者は、複合的な指標を基に改善された測定基準を用いて調査を行ったところ、未成年者の行動に対する"監視(モニタリング)"の大きな役割を見いだした。 反社会的行為に対する監視の貢献はますます重要になってきており、とりわけ、反社会的な子どもたちが青年期の初期に差しかかる中で、逮捕される危険性を抑えるためにも重要である[11]。多様なサンプルを用いた多くの研究が非行に関連する親の監視の重要な役割を確証し、また、各調査批評をはじめ、横断的研究調査や長期的研究調査においても、反社会的行為や非行の分散(variance)が適度である原因が親の監視にあることを示している[12]。ジェームズ・シュナイダーとジェラルド・パターソンは、その非行研究に関する調査批評の中で、概して、非行に見られる多様性は、家庭内の温かさや問題解決といった過程よりも、監視や躾といった親の管理の方策によって説明できる、と指摘している[13]。このように、非行と親の管理の方策のあいだに強い関連が見られるにもかかわらず、この関連性は、非行と愛情の関連ほど一貫性を持ちながら現れてはこない[14]。

 親と子の協力関係
家族のふれあい(相互作用)と非行に関して最も研究が進んでいる観点の一つが、親子のあいだの親密性や温情、情愛の欠如である[15]。親の愛着や親とのつながりを感じている子どもたちは、親が認めないような行動によってこの関係を危険にさらそうとはせず、このきずなが誘惑のある場面でも自制できる重要な原因となるのである[16]。親子のあいだの愛情と温情のきずなは、より良い行動と普遍的につながっている。その逆に、子どもは親の"心理的な存在"という感覚を見失うと、自由に不品行なふるまいをするようになるので、こうしたきずなの緩みが逸脱した行動のきっかけをつくる。横断的研究調査や長期的研究調査は、子どもに対する愛情に欠け、子どもを拒絶しているとみなされる親を持つ子どもが非行に走りやすいという点で一致している[17]。
 親子の強い関係は、親子のかかわり合いや前向きな家族のふれあいを促す。パターソンとその同僚は、青少年との対話や愉快な活動の共有などの前向きなふれあいと、反社会的行為や非行行為の発生率の低下を関連づけている[18]。親と青少年のあいだの協力的なふれあいは、コミュニケーションやお互いに対する敬意、模範的な関係、他者への共感を促進する。パターソンの研究は、しかしながら、前向きな親と青少年との関係は、非行の抑制に関しては、子に対する適切な管理の方策よりも効果が薄いことを示唆している。

 親と子の衝突と問題解決
青少年の非行に関連する家族の相互作用の別の側面が、深刻な親子の衝突と、衝突解決の失敗である。親子間の衝突への対処としてのコミュニケーションや問題解決のスキルの欠如、あるいはこれらの過った仕方が非行の一因になることがある。横断的な研究では、協力的なコミュニケーションの欠如や、自己弁解的なコミュニケーションの存在、対話の頻繁な中断、威圧的な対話、問題解決のスキルの欠如がすべて非行に結びつくことを示している。また、長期的な調査研究も、コミュニケーションの乏しさは非行を予測するとしている[20]。反社会的行為や非行を行う青少年の家庭では、家族メンバーとのコミュニケーションができずに高いレベルの衝突を経験しているだけでなく、他の家族のコミュニケーションを攻撃的だと受け取り、衝突を解決すべく話し合いや歩み寄りをしようとしていない[21]。問題解決を図ろうとしないと、今度は、親の能力に重い負担をかけ、エスカレートした攻撃(暴力)の可能性を増大させ、さらなる緊張や衝突を生むことになる。これは、最初は比較的些細だった攻撃的行為がエスカレートして、青少年やその家族を激化した攻撃の危険に否応なくさらすという、高圧的なサイクルである。概して、コミュニケーション力と問題解決力の不足と非行の関係はそれほど深くないものなので、これに関する調査研究は横断的なものであり、青少年と親の協調的関係と、親の管理と非行に関する調査研究ほどは一貫性をもって繰り返し実施されない。

 子どもへの虐待(冷遇)
親子の協調的関係の欠如や、不適切な親の管理、行き過ぎた衝突は、子への虐待(冷遇)として特徴づけられることがある。そのメタ分析において、ロルフ・ローバーやマグダ・シュトゥットハマー?ローバーは、明確に虐待(冷遇)とはみなしてはいないものの、怠慢で不注意な子育てや、親による情のない過度の懲罰は、非行の増長に関連していることが多くの研究で指摘されている、と述べている[22]。他の分野では、子どもへの虐待(冷遇)と非行を関連づける調査研究もまた、虐待(冷遇)を受けた子どもが子ども時代に非行や問題ある行動を高い確率でとっていることを示唆している[23]。この問題に関して、良く構成された最近の長期的調査研究では、公的な(表沙汰になった)虐待(冷遇)の実績が非行の発生率をおよそ50%増加させていると指摘している[24]。親による攻撃(暴力)のモデル化など、いくつかの仕組みによって、子への虐待(冷遇)と非行を関連づけられるかもしれない[25]。
 身体への虐待と非行の関連は、情のない躾と非行との関連と必ずしも同一視されない。むしろ、その証拠は入り混じっている。ローバーとシュトゥットハマー?ローバーのメタ分析による結果を立証するものとして、最近の研究でも、情のない親の躾は非行の徴候の一つであることが分かった[26]。他の研究では、情のない懲罰だけではなく、一貫性のない親の躾こそが、非行に関連していることを見いだしている[27]。情に欠けた、危うい環境においては、信念を持った厳格さが(青少年を)非行から守ることがある[28]。また、子育ての過程、中でも、厳格さと体罰に関連しては異文化間で差異が見られる。例えば、アフリカ系アメリカ人の家庭に関する調査は、情に欠けた、厳しい子育てでも、温かさと一貫性があれば、穏やかな子育ての放棄や一貫性のない関心よりも、ある環境においては非行に対する有効なバリアーになり得るという考え方を反映している[29]。ロナルド・シモンズとその同僚は、以前の研究では深刻な方法論的限界に苦しみ、情に欠けた懲罰と非行との関係を単純化しすぎたことをほのめかしている。彼らは、親のかかわり合いの質がいったん調整されると、情に欠けた懲罰は攻撃性や非行と関連しないことを見いだしたのである[30]。
 最後になるが、さまざまな家族過程と非行の関連を多くの研究が見いだしているので、家族の協調関係や管理といったいくつかの家族過程を一緒に検討するというモデルによって、非行に関する説得力ある説明ができると結論づけるのが、合理的だろう。パターソンとその同僚は、親による管理の5つの領域(監視、躾、前向きな手助け、かかわり合い、問題解決)における分裂のあいだにある相関(intercorrelation)を見つけ出したが、子どもの行動を親が管理する方がプラス志向の子育てよりも子どもの成長に良い結果を与えるとしながらも、攻撃性のある子どもの両親には子育てのスキルが一般的に欠けていることを指摘した[31]。家庭に関する諸要素の組み合わせで説明できる非行の分散(variance)の割合を評価したところ、10%から20%のあいだで多くの分散が説明されていることをシュナイダーとパターソンは発見した[32]。同様の結果は、ローバーとシュトゥットハマー?ローバーの評論でも言及され、そこでは、多様な家族の変数を使うと反社会的、非行行動の徴候が、1つの家族の手がかりを使ったときに説明された20%を超えて50?80%良くなったことが見いだされた[33]。
 



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