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子どもの影響と相互関係


長期的な調査研究は、非行に対する子育ての影響だけでなく、親に及ぼす非行の影響へもわれわれの目を向かせてくれる。非行に関する調査研究では、親が主として青少年に対して一方的な影響を与えていると最近まで考えられてきた。ところが、最近の研究では、"子どもが及ぼす影響"、すなわち、子育てが子どもの反社会的行為や、それが生み出す家族生活のストレスや不安の影響を受けやすいということが分かってきたのである[34]。こうした中で、親に対する最大の挑戦を表している子どもたちには、例えば一時の衝動や短気といった、初期の攻撃(暴力)と関係のあるような個々の特性、あるいは性格の履歴が見られる[35]。
「強要のサイクル」に関するパターソンの調査研究は、反社会的な子どもが両親を短気にさせれば、その躾には効果がなくなり、両親は子どもへの支援や関心をなくしていくことになることを示唆している[36]。この過程は子どもの反社会的行為を加速させるがその結果、比較的短いあいだにしばしば起こる親と子の行為の急激な変化をもたらすとともに、子育てのさらなる悪化が促進される[37]。したがって、単に双方向の影響があるというだけでなく、両親と青少年は互いに相互作用的な仕方で互いに影響を及ぼし合っているのである。
 犯罪学において相互に与える影響を考慮した見方でも、長期的な時間の枠組みの中では、非行が子育てに徐々に悪影響を及ぼすため、反社会的行為や攻撃的な行為をさらに悪化させることもあると示している[38]。テレンス・トロンベリーとその同僚は、青少年期の初期において両親に対する愛情が薄い場合にはこれが非行につながり、さらに親の無関心を増長することを見いだした[39]。一方の、青少年期の中期を見れば、Sung Joon Jangやキャロライン・スミスが、非行が親の監督と愛情の双方に悪影響を及ぼすこと、さらに、親の監督は互いに影響を及ぼすけれどもこの研究においては愛情は非行に影響を及ぼさないことを発見している[40]。これらの研究は、家族や青少年はそのさまざまな年代で互いに異なった影響を及ぼし合うこともあるという、発育過程に立った見解を裏づけ、子どもと青少年に関する調査研究にこういった発育過程に立った観点も導入することの大切さを強調している[41]。



Delinquency and Antisocial (日本語訳)目次に戻る 次のページへ進む